老猫を保護しました③
みみちゃんをお迎えした翌日、ママさんのお店にうかがう約束をしていました。
ママさんに「みみちゃんはもう外に戻さないです」とドキドキしながら宣言すると、
「それが良いと思う。もちろんさみしいけど、みみちゃんはもう年だし、またやられちゃうかもしれないでしょ。そうしてくれたら安心できるし。最後までかわいがってね!」
と言って、本当に入院費用を負担してくれました。
ママさんは16年間かわいがっていたネコともう会えなくなってしまうわけです。
もし外に戻してほしいと言われたら、お金は要りませんと言おう…と思っていましたが、ママさんのみみちゃんへの愛情とけじめを感じました。
今後も費用がかさむのは目に見えていますし、ありがたく受取りました。
ママさんが教えてくれた情報によると、みみちゃんはこの近くにあったタバコ屋さんで飼われていたネコでした。
その区画一帯は立退きにあって、みみちゃんは置いていかれてしまいました。
そしてタバコ屋さんの子だったときからの顔なじみだったママさんのお店まで、ごはんをねだりに来るようになったのだそうです。
想像すると涙が出そうになります。こんなに優しくて、人間のことが大好きで、賢くてかわいいネコをすてるだなんて、なぜそんなことができるのでしょう。
すてていった人は、寒空の下でひもじい思いをしてみてほしい。みみちゃんの野良生活と同じ年数、野良人間を体験してほしいです。
みみちゃんがすてられた話をすると「ネコは家につくっていうから、ネコのほうが残りたがったんじゃないの?」と一般論っぽく「被害者だってその気があったんだろう論」を持ち出してくる人(100%おっさん)がいるんですが、みみちゃんが"人につく"ネコであることは明らかです。
人間の方こそ、最後まで一緒に居たければ、鳴かれても暴れられても、キャリーに入れて連れていくはずです。連れていけないなら里親を探すとか。みみちゃんのために手を尽くしたとは思えません。
こんなに誰にでも懐くネコは見たことありません。ごはんをくれたことがない人でも、かわいがってくれる人だとわかれば撫でてもらいに近寄るんです。
ノミ取り薬をはじめるときに、医療ケア的なことは誰もやっていないようだと私は判断していましたが、ママさんはお店に出るための着物を汚さないよう、みみちゃんを撫でたことはないのに、今年のはじめに、風邪をひいてご飯を食べなくなったみみちゃんを初めてだっこして捕まえて、人に借りたキャリーに入れて、病院に連れて行ったそうです。
ママさんをはじめ、色んな人にかわいがられて、野良猫なのに16年も生きてこられたみみちゃんの命を預かるのですから、その人たちの分もかわいがらなければ、と感じています。
留守中と就寝時はみみちゃんをケージに入れて数日経ちました。
ケージ2階にホットマットを入れてやってもトイレで鳴いて過ごします。
不衛生だし、このままでは風邪をひいてしまうのではないかと、ケージに入れるのが憂鬱でした。外の過酷な環境よりはマシかもしれませんが、怪我が治るまでとはいえ、みみちゃんはこれで幸せでしょうか。
よくよく観察してると、上の段に登るのがしんどいみたいでした。
外にいたときは私の顔の高さぐらいの塀の上に登っていたので、ケージ内で上下に移動して過ごしてくれるだろうと思っていたのですが、筋肉が落ちてしまったのでしょうか。
母が休みの日にみみちゃんを部屋に解放して、楽しげに写真を送ってきました。
そして「この子はずっと部屋に出していてもおとなしい」と気づきます。
高いところに登ったり、ものを落とされたり、めちゃくちゃにされたり…というネコとの生活あるあるを想像していたのですが、高いところには全く興味を示さず、ずっと地べたにいます。
ごはんとトイレ以外は、撫でて欲しくて寄ってくるか寝てるかです。
ネコの16歳は人間でいうと80歳ぐらいだそうです。
ホットマットの暖かさに気づいてからは、もうずっとその上で骨抜きになって寝ています。
「夜寝てる間も出してやれば?」からはじまり、
「お留守番も部屋でさせてみようか?」
と、母の許可がどんどんおりていきました。
ここはもうみみちゃんの家です。
ただ、傷が治ってお風呂に入れるまで、寝室だけは立ち入り禁止です。
一応、ペット用の身体拭きシートで毎日ふきふきして、ブラッシングをしています。もちろん傷の周辺は避けてます。
みみちゃんの毛は日に日にフワフワになっていきますが、それでもずっと外にいたので、一度は洗ってやりたいです。
後日、ママさんにみみちゃんの写真を持っていきました。
スマホで撮った写真をコンビニで1枚30円でプリントできました。便利です。
ママさんが気に入ってずっと見ていた写真がこれです。
「みみちゃんらしい顔をしてる。若いときは本当にすごくかわいくて、学生さんたちが集まって写真撮ってたの」とのこと。
今だってとってもかわいいよ。